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Kaori Fujiwara | Fsports

【Fトーク#15】「健康に良いモノに関わりたい」それが全て。

〜トップマーケッターの原動力は飽くなき探求心〜

【Fトーク#15】のスペシャルゲストは、キユーピー株式会社で上席執行役員(新規市場開発担当)の藤原かおりさんです。藤原さんは、国内外で食品のB to Cマーケティングを学び、前職時代に事業本部長として売り上げ10倍を記録。そして現在、キユーピーで「ゆでたまご」等の人気商品を手掛けられています。今回、藤原さんは20年以上の交流がある株式会社F(エフ)の河合健太郎と、健康ビジネスの可能性について語り合いました。日本でSDGsが話題になる以前からサステナビリティを経験する藤原さんとの対談を、ぜひお楽しみください。

#15トークゲスト:プロフィール

藤原かおり キユーピー株式会社 上席執行役員 新規市場開発担当1997年に慶應義塾大学法学部卒業後、旭硝子に入社。2001年にマッキャンエリクソンへ転職。その後、2007年よりダノン ウォーターズ オブ ジャパンで「ボルヴィック」のブランドマネジメントを担当、2011年にカルビーに入社し、2017年より執行役員フルグラ事業本部長を務め、2020年3月より現職に至る。「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」ベストマーケッター賞受賞。

外資系メーカーでサステナビリティを経験

藤原:河合さんと初めて会ったのは、私がマッキャンエリクソンにいた時でしたね。B to Cマーケティングをやりたくて、2年だけいました。


河合:かなりインパクトあるコトをやっていた印象だけど、そんなに短かったんだ(笑)。あの頃よく飲んだね(笑)。

藤原:学生時代よりも遊びましたね(笑)。

河合:その後海外に行って。

藤原:ダノンでボルヴィックのブランドマネージャーを担当し、主にモノがベースのマーケティングをやりました。自分の企画提案だけでお金をもらう広告代理店の仕事は大変で、商品を売るためだけに集中していく事業会社の仕事のほうが性に合っているコトが分かりました。

河合:ボルヴィックの「1ℓfor 10ℓ」(消費者がボルヴィックを1ℓ購入すると、アフリカに住む人々に10ℓの清潔で安全な水が供給されるプログラム)は、グローバルイニシアチブ?

藤原:本社はフランスなのですが、このプログラムはドイツから始まりました。

河合:売り上げに影響あったのかな?

藤原:期間中、シェアが上がりました。チャリティーではなく、きちんと売り上げと利益に貢献するモノだからこそ、何年も続けることができました。コーズ・リレーテッド・マーケティングの走りでもありました。

河合:まさにSDGs的なものの先駆けだね。ボルヴィックでの「1ℓfor 10ℓ」は、「SDGsと売り上げが両立するのか」というテーマが見事に解決された数少ない事例だよ。

藤原:ボルヴィック時代の2007年から4年間、アフリカの水問題の解決に貢献する活動に加え、気候変動の問題に取り組むリサイクルペットボトルの導入の検討も担当していました。

河合:へー、凄い。

藤原:当時からダノンはかなり真剣にやっていました。日本ではSDGsに企業の多くが向き合い始めたのはここ数年ですよね。

河合:日本では「これで売れるか」とか、「これだとコストがかかる」とか、もちろん議論があるじゃない。ダノン自体が企業として揺るぎない意志でやっていたのかな?

藤原:創業者が当たり前の様にやっていましたね。

河合:なるほど。

藤原:ダノン時代に、「健康に良いモノに関わりたい」と考える様になったと思います。

河合:なるほど。

藤原:ダノンには「健康に良いモノのみを扱う」という企業理念があり、健康に直結しない事業を売却し、健康事業の会社を買収して規模が大きくなっていきました。

河合:健康志向の方に舵を切って企業体が変わっていったんだね。

藤原:欧米では、そのようにビジョナリーな経営をしている会社があります。ダノンではブランドマネージャーとしてマーケティングに関する仕事を色々体感できましたね。

河合:ブランドマネージャーは、実質ブランドの社長だからね。

カルビーで売り上げ10倍を達成

藤原:ダノンでは分業になっていましたが、カルビーではマーケティングの仕事をやりながら設備投資や海外展開も担当し、「えっ!全部私がやるの!?」的なコトばかりでした。

河合:それは大変だ(笑)。

藤原:当時のCEO松本晃会長の存在が絶大で、視野を広げて未来を考えるキッカケを与えてくれました。「小さなことばかり考えるな!Think Big!」「とにかく今すぐ!」とよく言われ、松本さんに付いて行けたから今の私があると思います。

河合:あははは。でも、凄く良い経験を積んだね。僕もたまに工場の話をするけど、サプライチェーンの細かい所まではよく分からないからね。カルビーでの経験も凄いよ。売り上げもめちゃ上がったみたいだし。

藤原:5年程で10倍になりました。それを今でも期待されていますが、、、(笑)

河合:すごっ!

藤原:0から1にするのが結構大変ですが、もともと売り上げ30億円がある中での10倍でしたからね。

河合:売り上げを10倍にするというコトは、ある意味インフラも10倍にしなければならないよね。

藤原:当時のカルビーは投資の意思決定が速かったので、物事がタイムリーに進みましたね。

河合:原料手配、商品供給、組織もあるし、会社を大きくするためには営業部隊等何もかも必要になるからね。

藤原:周りの方々がとても優秀でした。

河合:当時の松本さんが言ってきたコトを、各部署が実現できたのが凄いよ。そこまでのマーケティングを経験できる人はなかなかいないと思う。

頼まれると燃える気質

河合:キユーピーに入社して今年で何年目?

藤原:今、3年目です。

河合:「多くの人に体に良いモノを届けたい」という気持ちが今でもあるのかな?

藤原: それはあります。マスブランドみたいなモノを追い求めてきた中で、既に存在するモノよりも、「新たに開発した商品や小規模な事業をどうにかしてほしい」と頼まれる方がやる気が出ますね。

河合:なるほど。

藤原:事業の規模を大きくするためには、会社自体の器が大きくなければなりません。「お金がなくて設備投資を出来ない」というような仕事には、あまり興味がないかもしれません

河合:理想を求めすぎて、仕事として成り立たないと意味がないからね。

藤原:私としては富裕層向けの商品やサービスよりも万人が欲しいと言ってくださるマス向けのモノに興味がありますね。

河合:そこは好みも結構分かれるところかもね。最近だと、B to Cで、ブルーボトルのような元々ニッチから始まりつつ、ネスレの買収で資本を増やして規模を一気に広げてゆくケースも多いよね。

藤原:そのようなビジネス展開もおもしろいですよね。

デジタル化の課題

河合:最近のビジネスやマーケティングで何に興味ある?

藤原:デジタルを勉強しなければならないですね。担当している新ブランドでInstagramを立ち上げましたが、まだ運用方法の正解が掴めず、試行錯誤をしているところです。

河合:あははは。でも、代理店さんにお願いしておけばOKってわけにもいかないからね。

藤原:そうですね。まだ、こうやれば上手くいくというのが分からないですからね。

河合:なるほど。中国にいた時、TikTokに力を入れていたよね?

藤原:日本の広告とは違い、当時の中国ではインフルエンサーのライブコマースが強かったですね。今の日本のデジタルも、昔と比べて手段があり過ぎて、YouTube、Twitter、広告、インフルエンサー等。「ああ、もう、選択肢が多すぎる!」ってなります。

河合:それらを使って良いネタを仕掛けることができれば、二次的な拡散もあるからね。

藤原:デジタル広告は、オフラインの店舗で販売している商品の売り上げ拡大に寄与するかが見えづらいです。お客様がどのタッチポイントで情報に触れて、どうやってコンビニの売り場までたどり着いたのか等、まだ解明されていない部分が多いのではないかと思います

河合:デジタルで店頭集客を増やすなんてかなり昔から言われているけど、なかなか腹落ちするものがないよね。

藤原:一般的に、メーカーの方々も、小売業様と互いに半信半疑の状態で打ち合わせしている感じもあるでしょうね。やはり、広告プロモーションは、まだまだテレビコマーシャルの影響力は絶大です。あとは、戦略PR(広報活動)によるメディア露出も有効なので、テレビコマーシャルの予算が無いような新商品には最適な手段だと思います。

河合:デジタルと店頭をつなぐサービスも、技術的に色々なモノが出てくるけど、なかなか浸透して残っているものがないね。

「ゆでたまご」で健康な体作りを

藤原:この2年、新型コロナウィルスの影響で試食販売をできないので、新商品の展開がかなり難しいですね。

河合:感染対策をしても駄目なの?

藤原:メーカーが本格的に行う試食販売はまだ先になると思います。

河合:試食でターゲット層が分かるだろうし。

藤原:まず食べたことないモノは、なかなか買わないですからね。

河合:食品系はサンプリングをやらないと厳しいよね。

藤原:早くコロナ禍が終わってほしいです。

河合:キユーピーの「ゆでたまご」はZ世代向けなのかな?殻をむかないで、半熟のゆで卵がそのまま食べられるから素晴らしいよね。 藤原:ありがとうございます。「ゆでたまご」には良質なたんぱく質など様々な栄養素が含まれているので健康な体作りをしたい方に、ぜひ食べていただきたいですね。

今、関東と中京エリアの一部コンビニエンスストアで展開していまして、今後、販売エリアと業態(スーパーやドラッグストア等)を広げていく予定です。

河合:今後どうなるか、非常に楽しみだね。

藤原:ありがとうございます。

河合:最近、韓国のZ世代の間でアームカバーが流行っているみたいだよ。

藤原:明日から日焼け対策で付けようかな。韓国のトレンドは凄いですね。

河合:日本では、なぜか令和ギャルやYakult1000が人気あるからね。

藤原:Yakult1000は、渋谷駅前でずっと電子看板を出していましたね?

河合:若い子の間でも「よく眠れる」という効果が話題になっているみたい。

藤原:エビデンスがあるんでしょうね。

河合:凄いし、俺も飲んでいるよ。

藤原:河合さん、通販で色々購入しているので良いお客さんですね(笑)。

河合:気づいたら結構な送料を払っているしさ。

藤原:通販が習慣になると、そうなりますよね。

河合:何かを続けていると「良いコトがありそう」というのと、辞めたら「効果がなくなりそう」という気持ちになるからね。

藤原:確かに。

未知数な健康ビジネス

河合:スポーツやウェルネス等で気になっていることはある?

日本の健康産業で、まだ凄い事例がないよね。

藤原:大手で進んでいる所がどこかと言われると、あまり思い浮かばないですからね。

河合:確かに、盛り上がっていないよね。

藤原:スティーブ・ジョブズみたいな人が出てこないですかね?

河合:健康業界のジョブズね。

藤原:海外の情報を調べていないですが、色々ある印象を受けます。

河合:絶対あると思うよ。因みにスポーツをするコトに興味ある?

藤原:河合さんに教えてもらったリアルワークアウトのパーソナルトレーニングに通っています。

河合:どう?

藤原:筋肉が付いてきて、やめられないですね。でも、だんだん筋トレが辛くなってきました(笑)。

河合:俺はジムにストレス解消のために通っているよ。辛いけど、やった感が良いよね。ゴルフのように楽しく体を鍛えられるなら嬉しいけどね。

藤原:女性でも、「楽しく体を鍛えたい」という人は多いと思います。

河合:スポーツを競技として捉えるか、健康として捉えるかで、まるでパイが違うからね。

藤原:一緒にスポーツと健康に良いモノを組み合わせた事業を考えていきたいですね。

河合:そうだね。また色々話しましょう。

藤原:はい。本日はありがとうございました。

河合:ありがとうございました。 (了)