女性フィットネスマーケットの現状と未来を語る「フィットネスがライフスタイルの一部に」
今回のゲストは、世界55ヶ国以上で大人気のフィットネス&ライフスタイルメディア「ウィメンズヘルス(日本版)」で編集長を務める影山桐子さん。株式会社F(エフ)の久保田万美が、影山さんと女性のフィットネスマーケットの現状と未来について語りあいます。
女性のフィットネスマーケットを知り尽くす2人のトークをお楽しみください。
#2 Fトークゲスト
影山桐子氏 プロフィール
株式会社ハースト・デジタル・ジャパン
ウィメンズヘルス編集長
一般社団法人ランガール 理事
エル・オンライン、フリーエディター、雑誌「DRESS」、アットコスメのエイジング世代向けメディア「A-Beauty」などを経て現職。2010年から女子による女子のためのラン祭り「ランガール★ナイト」を9年間開催。現在もランガールではランナーによるゴミ拾いや街の見守りランなどを発信している他、各地のマラソン大会へのアドバイザーとしても参画している。
ウィメンズヘルスでは「#運を動かす」運動を多くの女性に広めるため、365日女性の健康に役立つ情報を発信している。
https://womenshealth-jp.com
―2人の出会いを振り返る
久保田:私が影山さんにお会いしたのは11、2年前くらいですね。「エル・オンライン」でお世話になっていたかと。
影山:そうですね。その頃は女性向けウェブマガジン「エル・オンライン」で、ファッションを担当していました。ちょうど世の中が紙からデジタルに移行している時期で、ウェブメディアとしてエル・オンラインは、メーカーさんがプロモーションを行う際に強力な存在だったと思います。
久保田:10数年ほど前のフィットネスというと、ヨガやランニングなどがトレンドになってきた頃でしたよね。私はその頃、アディダスでウィメンズの担当をしていて、影山さんとランニングイベントをご一緒するようになった頃でもあり、ちょうど世の中で女性のランニング熱が盛り上がっていきました。
影山:その後、エル・オンラインから離れ、女性向けのランニングイベント「ランガール★ナイト」を立ち上げる際に、皇居で走りながら相談したりしてましたね(笑)
久保田:走りましたね~(笑)
「ランガール★ナイト」が斬新だったのは、走ることだけを目的にしていなく、女性ランナーが色々楽しめる素晴らしいイベントになっていたことですね。多くの業界からオシャレで意識の高い女性たちが参加していました。
―ランニングをオシャレに
久保田:ウェアといえば、昔は「ランニングウェア」や「ヨガウェア」というカテゴリーのものがなく、ジャージなど「スポーツウェア」という大きなくくりのものを着て体を動かしていました。サウナスーツとかもありましたよね(笑)
それがスポーツメーカーも多くが女性のウェアに力を入れはじめ、レギンスにショーツやスカートを合わせたり、カラフルなシューズとコーディネートしたり。 世界のトップファッションデザイナーとのコラボなど「ヨガ」「ランニング」といった動きに特化したウェアやシューズが出てきて、女性のスポーツ市場が大きく伸びた時期だったと思います。
影山:ランニングというものがオシャレなものに変わっていく時でもありました。ランガール★ナイトは、「オシャレに走る。キレイに走る」ということもコンセプトにしていましたからね。ランニングウェアのファッションショーがかなり好評で、参加者の皆さんが写真を沢山撮られていました。年々、スタイリッシュでファッション性の高いイベントになっていったと思います。
―拡大する女性フィットネス市場
久保田:エル・オンライン時代からこれまで、女性のフィットネスビジネスをご覧になっていて、イベントへの協賛企業など変化はありましたか?
影山:今は、スポーツだけではなく、ファッション、ライフスタイル、コスメ、ビューティーと、女性に関わるあらゆる業界がフィットネス女子のマーケットに参入してきていますよね。
最近、特徴的なのが、プロテインメーカーさんの協賛が増えていることです。プロテインは、もともとボディビルをやるような人たちが飲むものというイメージでしたが、今では意識の高い女子たちが美容サプリのような感覚で愛用しています。
ウィメンズヘルスで読者調査をすると、約半数もの人たちがプロテインを飲んでいることが分かりました。女性向けプロテインも選択肢が増えてきましたし、女性のフィットネス市場の盛り上がりが凄いと感じています。
久保田:また、フィットネス×テクノロジー商品を扱う企業さんも増えましたね。
影山:「ランガール★ナイト」を立ち上げたころ、携帯電話メーカーさんがアプリでランとウォークを推奨していたのが、今の前身だと思います。当時、iPhoneが登場しましたし、音楽を聴きながら走ることも流行りました。今はスマートウォッチ系やFitbitのようなリストバンドなどのウェアラブルテクノロジー商品も増えましたね。
―フィットネスがライフスタイルに
影山:フィットネスを始める理由は、最初はダイエットの場合が多いですが、今フィットネスがライフスタイルの一部になっている人たちの多くは、ダイエットのためにというよりは、気持ちがいいから続けているのだと思います。久保田:鍛えることがカッコイイというのもありますよね。昔はダイエットやランニングを隠れてやっている人たちが多かったですが、今では「フィットネスしている私」がセルフブランディングの一つにもなってきていますね。
影山:ファッション的にもスポーツウェアを取り入れたり、シューズもランニングも普段使いも出来るというものも増えているので、よりライフスタイルウェアとして浸透してきています。
―多様化するフィットネス
影山:最近はランニングだけをする人が減っていて、ヨガとラン、ピラティスとランなど、何かを組み合わせて行う傾向が高まっていますね。年々、フィットネス市場が多様化しています。ヨガ、ピラティス、クロスフィット、暗闇フィットネス、パーソナルトレーニングなど色々ありますからね。
久保田:10年前にパーソナルトレーニングをやるのは一部の人だけでしたが、確実に増えていますよね。先日弊社で行った女性に向けての調査でも次にやりたいフィットネスの中でパーソナルトレーニングが多かったです。
影山:結果を早く出したい人がやる傾向にあると思います。マンツーマンでトレーナーがつくと、トレーニングから逃げられなくなりますからね(笑)。
久保田:それはありますよね(笑)。
影山:パーソナルトレーニングでは大きな器具も必要なく、ちょっとしたスペースがあればできますから、開業しやすいというのもあるかもしれませんね。
最近では、体と心が健康である幸せ=「ウェルビーング」への関心も高まっています。体を鍛えることは良いことですが、ストレスがたまると逆効果ですし、体と心をバランスよく考えるというのがトレンドになっていますね。
久保田:同感です! 体と心、どちらも健康でありたいですよね。最近よく聞くマインドフルネス、瞑想などのメンタルフィットネスを、フィジカルフィットネスに是非組み合わせてほしいです。
―フィットネススターの発掘
久保田:フィットネストレーナーが活躍できる場が増えてきましたよね。彼らのSNSでのインフルエンス力って凄いと思います。スポーツメーカーも含め多くの企業が投稿をチェックしていますし、人気のあるトレーナーを起用するのが大切になりますよね。
影山:彼らが着るウェアをほしいというお客さんが増えていますからね。
久保田:昔はモデルさんを使ってスポーツウェアの宣伝をするのが主流でしたが、最近の傾向として、コアなファンがいるトレーナーを起用するメーカーが増えました。ウィメンズヘルスでも新しい取り組みを始めるとのことですが、その話少し聞かせてください。
影山:実は、11月からウィメンズヘルスで女性トレーナーのマネジメント事業を開始することになりました。魅力的で素晴らしいトレーナーの方々が沢山いらっしゃるのに、まだあまり表に出てきていない。セルフブランディングも含め、露出を増やしていくなど、メディアだからこそできることがあると考えていますし、トレーナーの存在感を出して価値を高めていきたいですね。
個人の発信力がメディアよりも遥かに大きく、広告価値が高い人もいます。彼らと上手に付き合い、海外のように年収何億円というスケールのフィットネススターを送り出していきたいですね。
久保田:どのようなトレーナーを採用する予定ですか? 条件などあれば教えてください。
影山:スター性があると感じた女性になると思います。最初はご紹介の場合が多いと思いますが、編集部がイベントやSNSで見つけてスカウトするケースも出てくるかもしれません。
今、ウィメンズヘルスで様々な企画に読者代表として参加したい人たちに「#whfitgirls2019」を付けて投稿してもらっているのですが、そういった投稿の中からも輝く人材を発掘できたら面白いな、と思います。
久保田:フィットネススターを目指す方は、是非「#whfitgirsl2019」をつけてインスタにどんどんポストして欲しいですね!
そういう意味で、スターの発掘方法も変わりましたよね。
影山:広告案件も、普段からのSNS投稿の内容も選考基準となっていますからね。インスタを上手く活用できているか、フォロワー数も含め、大事なチェックポイントにはなります。キャスティングの際に、メジャーなタレントの方でもスポーツをしている雰囲気やヘルシーな印象があるポストが多い方は、提案しやすいと思います。
―これから流行るフィットネスとは
久保田:女性のフィットネス市場で、何が流行ると思いますか?
影山:ニューヨークなどで流行っている、「お家(オウチ)ジム」が日本でも増えると思います。消費者がトレーニング器具を購入し、家にいてもオンラインでスタートレーナーの指導を受けられるので、大きな可能性を感じますね。
久保田:忙しい女性には助かるサービスですね。「お家ヨガ」はすでにメジャーになってますし、色々なフィットネスオプションが増えると思うと楽しみですね。その分、ジムやスタジオの差別化は大事になりそう。
久保田:話題が多すぎて止まらないので、これはまた第2弾をしないと(笑)最後に一言よろしくお願いします。
影山:私たちもフィットネスを通して心と体が健やかな女性を増やし、より良い世界にしていける提案を出来ればと思います。これからも一緒に、女性フィットネス業界を盛り上げていきましょう。
久保田:是非よろしくお願いします! 今日はありがとうございました。