【Fトーク#7】 300X Communityが求める人材は「「変わりたい人・成長したい人・世界と繋がりたい人」」
(トップ画像:左・伊藤嘉明 右・白川創一)
2020年6月30日にFacebookで立ち上がったグループ「300X Community」に、1580人(10月現在)近くのメンバーが集まっています。発起人の伊藤さんは外資と日本のトップ企業を渡り、現在は事業を展開様するX TANK で代表取締役を務めています。今回、300X Communityの創立メンバーの1人となる株式会社Fの白川創一が、伊藤さんと300X Communityを通じて何を実現していきたいのか?2人は、熱くそして大胆に本音を語り合います。
―300X Communityとは何か?
白川:まず、300X Communityとは何なのかをお話しいただけますか?
伊藤:僕がこれまで日系と外資系の会社を経験してきた中で、日本の会社のいちビジネスマンとして引っかかることがずっとありました。例えば、サービス残業をしなければならないとか。上司に気を遣って休みも取れないとか。かたや海外と比べると、真逆なのですよね。日本では組織のために働くのがキャリアで、自分を高めたり、スキルを身につけたりしていくことに対してキャリアという感覚がないので、違和感を感じてきました。
2016年に起業をした時に、今の300X コミュニティのもとなるコンセプトを作りました。そもそもなぜ300と言うと、2003年頃の映画で「300」(スリーハンドレッド)というギリシャ帝国に関する映画があって、ギリシャの都市国家スパルタの王がペルシャ軍に攻められた時に、「迎え撃って戦わなければならない」と言ったのですが、今の日本みたいに平和ボケしているギリシャですからね。「今じゃないよ。話せば分かる」と言って最初は戦わなかったのですよね。
ですが、スパルタの王様は300人の兵を連れて、ペルシャ軍100万人を相手に無謀な戦いを挑んで、結果的に善戦をしたけど全滅をしました。それを見て、ギリシャ軍は「マズイ」と気付いて奮起をして戦ったというストーリとなります。
僕はこの映画を見て、「300人で戦うなんてあり得ないな」と思い、色々調べると、「どうやら本当だった」ということが分かりました。昔、そういう人達がいたのだと。人類史上、この戦いが起点となって今の西洋文明があるというのを知って、すごく感銘を受けたのですよね。
同じようなことが実は明治維新などでもありました。しかし、明治時代以降の日本で戦後の発展などはありましたが、「価値観を変えなければならない」というような大きな変革などなかったですからね。
僕の周りの人たちの話を聞くと、皆が皆納得のいかない状態で仕事と生活をしているわけですよ。残業は当たり前で、休みもなく家族との時間も取れないとか。社会システムで言えば、年功序列が当たり前で、能力があろうがなかろうがお金をもらってみたいな。
皆ものすごい不満を持っているのに、何も変えない。変えようとしない。「明治以降、変えようとした人たちがいない」ということを考えた時に、ギリシャのように300人によって歴史を変えたように、同じような危機感を持つ人たちが集まれば、「何か変えることができるのではないかな」と思ったのが始まりとなります。
白川:300X Community立ち上がりまでのストーリー、非常に良いですね!
伊藤:ありがとうございます!
―劇的な変化に遅れをとる日本の課題]
白川:私はある外資系のスポーツブランドに18年勤めていて、海外と日本とではビジネススタイルに関して言うと、気付いたら日本だけが時間が止まっていたみたいな感じがしました。
伊藤:良い表現ですね。
白川:日本は少し前まで、家電先進国とIT先進国と言われていましたが、実は世界の先進国から遥かに置いてけぼりを食らっていますよね。
これを新型コロナの影響によって、良い方向に持っていければ良いのですが。
伊藤:本当にそうですよね。僕は起業をする前の2年間、ハイアールアジアグループの総裁として、ハイアールがパナソニックより買収した元三洋電機のシロモノ事業体の再生を任されていました。
僕はタイで生まれ育ち、常に発展する日本を見てきました。しかし、その輝ける日本ブランドが中国のメーカーに買われ、且つお荷物として扱われているという現実を、会社の中に入ってさらに酷いと痛感して、唖然としたのですよ。「え、日本ってこうなの!?」と。
伊藤:「日本の技術やブランドは凄い」といつも言うじゃないですか。僕の事業のX-TANKコンサルティングのクライアントの小型液晶メーカーでもそうですが、「テクノロジーは世界一だ」と言っているのだけれど、実はそうではなくなってきている。世界のレベルはいろんな分野で日本に追いつき、場合によってはとっくに追い越しているのです。家電もオワコンになったし、シロモノクロモノもそうだし、精密部品も同じ道を辿っています。この1年の流れでスマホのパネルが液晶主流から有機ELに変わってきています。日本は液晶大国だから、ここでもう終わってしまうのですよ。オワコンの嵐となります。日本人がいつも言い訳にしている、「でも日本は技術が凄いんだぞ」とか言っているということは、日本の時代が止まっているのですよね。それに気づいていないのか、気づかないふりをしているのか、気づきたくないのか。
白川:どうなのですかね。気づいている人は、気づいているのでしょうけど。日本は島国がゆえに、比較対象があってもそんなに刺激がないですからね。ヨーロッパやアメリカの場合は陸続きで異文化が混在しているので、切磋琢磨する環境が日本よりはるかに凄いですよね。
日本のどこかの企業が「うちの技術は凄い」と言いますが、それを彼らが作って満足しているだけで終っていますからね。その技術をどうマーケティングをして、消費者に価値を植えつけていって、1円でも高く売るビジネスを構築するか。日本では全体像のフローが全然出来上がっていないという感じがします。断片的に薄い人たちが「私の与えられた仕事はこれです」という状態がずっと続いてきているので、「あれ?日本大丈夫?」みたいな感じになっていると思いますね。
伊藤:「では、原因は何?」という話になると思います。例えば日本の教育に問題があるとか、日本は島国だからとか色々あると思うのですが、結局300X Communityを今回立ち上げたきっかけにもなるのですけど、1番は「しょうがない」と思ってしまう我々全員に原因があるのだと思うのですよね。「それは文化だから」とか、「自分が言ったからって変わらないし」という諦め(言い訳)の文化を共用している自分達に原因があるのが、1番の問題だと思うのです。
白川:そうですよね。会社自体がすぐに変えられるかと言うと、経済的な諸事情もあるし、欧米みたいに簡単にレイオフ(一時解雇)できる環境にないし、時間がかかるのかと思います。でも、個人の意識って、学習や情報を自分達で得た中でその人自身が変えられるはずですよね。
伊藤:そう思います。
白川:そう意味で、伊藤さんの元々の300X Communityのコンセプトに合った300人の、異端児というかチェンジエージェント、変革者達。
やっぱりそのスピリットがあって、こういう人達が集まって増えていかないと何も変わらないですからね。世界に置いてけぼりを食らっているので、ここをどうキャッチアップしていくかが凄く大事ですよね。
―300X Communityに感じる可能性
伊藤:よく日本では、「イノベーションが弱く、イノベーターがいないから変革しない」と言われますが、違うと思います。全員が全員、トーマス・エジソンとかスティーブ・ジョブズだとか、そんな人である必要はないですよね。逆に、やり方をちょっと変えるだけでもイノベーションだし、考え方を変えるだけでもプロセスが変わる訳ですから。それがイノベーションだと思うんです。
そう考えると、会社の文化や仕事の仕方を変えるというのは社長の命令で変わるとは思っていなくて、最終的に変えるのは個の集団だと思っています。その集団の波が大きければ大きいほど、大きな波になる訳ですよね。
一石を投じたことがただの波紋となっていたことが、5人、10人の波になっていけば、それが新しい波になると考えたことが300X Communityの概念でもあります。日本の明治維新の時に世の中を新しいなみで動かしたのは、20代、30代の若者達です。では、「なぜ僕らにはできないのだろう?」という話なのです。
今回のコロナ下でもそうではないですか。リモートで仕事が回ることが分かっていたのに、緊急事態宣言がなくなった瞬間に満員電車に乗って「最悪だよ」とか「うちの経営陣は古いんだよ」と言う訳です。僕からすれば、「君達が変われよ。経営陣を説得しろよ。」ということなのですよね。
―300X Communityで実現したいこと
白川:伊藤さんはこれまで多くの企業の経営の最先端で結果を残してきたと思いますが、そこで感じてきたことはありますか?そして、300X Communityで何を実現していきたいですか?
伊藤:先ほど4年前からこの300X構想を持っていたという話をしましたが、自分がビジネスマンとして働き始めた頃から日本は輝きを失っていたのです。それは外資にいて分かりましたし、日系企業でも現状を目の当たりにして痛感しました。そして、起業をしてから講演会、セミナー、研修など機会があるごとに「我々は変わらなければダメだ」とずっと言ってきたのですよ。
僕は起業前までは自分がかかわった会社では毎回変革者としてやってきた自負があります。ただしそこで気づいたのは一つの会社にて変革をおこすことでその会社は若干は変わるかもしれない。ただその変革はその一社で起きたことなのです。そこにいる数年はその会社以外は変えられないので、起業をした時にやろうと思ったことというのは「1社で変革を起こすのではなく同時に複数の会社で変革を起こしたい」ということでした。
今回のコロナ下でたくさんのことが変わりました。今まで必死に壊そうとしてきたことが、コロナが来ていっぺんに壊れてしまったのですよね。そしてそれは、これからもまだまだ壊れる波がどんどん大きくなって、当たり前だと思っていたものが完全に崩壊して元に戻らなくなる流れになると確信しています。だから「今やらなければならない」と凄く思っています。
起業してからの4年は自分のクライアント先企業群を「変えなければならない」との信念で自分が変革ドライバーとしてやってきました。今回のコロナで、いろんな分野でリセットがかかってきます。今までの日常が非日常になって、今後は何がこれからの日常になるのかも分からない。本当のガラポンリセットですよね。300X Communityで集まったメンバーが共感し、一緒に何かを創り出すことによって不安な気持ちも払拭できる。今までは僕自身が必死に足掻いてやってきたものを、これからは皆で一緒に創り上げるというスタンスに変わったのです。
300X Communityを立ち上げる時に僕が旗振り役をやりました。
このコミュニティはここに集まる全員が主役です。自分が「変えたい」「こうありたい」と思うことを創り上げていけるような、同じ志を共有し我々の「これから」を新たに作っていくためのプラットフォームとしたいと考えています。
300X Communityのヴィジョンに「変わりたい人・成長したい人・世界と繋がりたい人」のためのコミュニティと掲げています。成長するには常に前向きでなければならないですからね。日本では40代で部長になると早いと言われるけど、外資系では30代でなるのは当たり前です。僕も早め早めにポジションを上げキャリアを築いてきましたが、やっぱり相当努力もしましたし、常に自分自身を磨き続けなければいけない実現できないです。
日本の企業でのキャリア構築は、グローバルスタンダードで考えると時間が止まっていると思うし、年功序列は今みたいにスピード感がある時代には最もそぐわないスキームだと断言します。インターネット、デジタル時代になって、グローバル市場との境目がなくなってきました。今回のコロナによって海外出張が必要ないくらいにズーム等でミーティングをしている。そう考えると世界の繋がりが今まで以上のスピードで加速していくと思うのです。物理的空間のハンディキャップがなくなってきている訳ですからね。
それで、成長したい、変わりたい、と切磋琢磨する前向きな人達が集まることによって、絶対に化学反応が起きるはずと考えました。そのような「場」を作ることによって「次の日本が見えてくるかな」と思い、300X Communityを始めました。
―日系企業と外資系企業との違い
白川:300X Communityは、伊藤さんがいろんなことにインスパイアされて出来たコンセプトから始まり、自分自身が、組織を、会社を、ひいては社会を変えたい、変わりたいと考える前向きな人達が集まっていろんな化学反応が起こると思います。また、色々な機会を作って学び、時には一緒にプロジェクトを実現できるコミュニティーであるということですよね。
伊藤:そうしたいですし、そうしなければならないと思っています。僕は色々な会社で色々なポジションをやらせてもらいました。経営者である社長と部長とではやれることが違う訳じゃないですか。でも今振り返ると、それを言い訳にできないかと思うのですよね。
日本コカ・コーラ株式会社にいた時に、色々な運が重なって31歳という若さで部長職に就きました。最初は3人しかいない新設部門でしたが、効率を考え自分の部署だけは勝手に在宅勤務をやっていましたからね。
白川:ははは(笑)。
伊藤:11時から15時まではパソコンの前に座って、チャットもできるから「在宅勤務でいいよ」ということにしていました。1人の社員は「そんなので仕事ができる訳ないです」と否定していましたが、僕は「月の半分はそれにする」と勝手に決めたので、人事部門長は怒っていましたよね。でも僕は自分の部門の効率を考えて仕事をしているし、「人事の仕事じゃないよ」と言いました。僕にはこういう経験があるから、動かし方(こじ開け方)を経験しています。
僕は当時多摩川学園駅近くに住んでいた時に、小田急線に乗って多摩川を渡って会社まで通っていました。それで台風があった時に、「もし川が溢れて家に帰れなくなってしまったらどうしよう?」と思い、「台風の時は会社を休む」と決め、勝手にそれを実行していました。でも今思うと、それで良い訳ですよ。
ソニー・ピクチャーズ時代に福島原発事故があり、僕の事業部門全員を自宅待機に切り替えたのです。するとその時の役員会で「勝手なことをするな。お客様は動いているのだ」と問題になったのですが、僕の経営独断で自分の社員は自宅待機させました。僕以外の他事業部は普通に出社したのですが電車が動かないので会社まで5時間もかかったのですよ。それで「仕事にならない」と言って、皆解散している訳ですよ。それ以降はグループ全体で在宅勤務になりました。効率だけでなく社員の安全面を考えると最初から自宅待機にする、というのが僕がくだした経営判断です。グループ内では僕だけだったのですが。
白川:外資の方が一定の職に就く際に年齢よりも能力を求めて来て、それに対するレスポンサビリティーを与えるじゃないですか。日本だと、肩書きだけの部長とか課長が一杯いる場合も多いですからね。その点が日本と外資では大きく違いますよね。
伊藤:そこは凄く同感で、日本の会社と決定的に違うのは、結果だと思うのですよね。結果を出すのであれば任せるよ。逆に、結果が出せなければ他に任せるというのは、当たり前の話であって。
今回のコロナで、日系企業にいる知り合いが「出社しなければならないのです。部下が提出する書類に判子を押さなければならないので」と聞いた時に、ハンコを押す、というそれが今でも仕事であることにビックリしましたからね。
白川:かわいそうですよね。
伊藤:かわいそう過ぎますよね。それをやっているのが40代半ばの人な訳ですよ。
日本には優秀な人が沢山いるのに、仕組みとして結果的には才能を持っている人材を塩漬けにしたり、最悪のケースでは壊すことになる仕組みそのものが日本の為にならないし、何よりももの凄くもったいないことです。
「外資系経験者が通った道には、草木も生えない」みたいな言い方をされますけどね。外資で経営陣まで上り詰めた人は、給与が低い日本の企業には行かない訳ですよ。ただ、僕もそうなのですが、日本の企業の良い所と悪い所の両方を見てしまった以上、「変えなければならない」と思う人も多いのでは無いかと思うのです。
白川:そうですよね。日本の企業を全て否定するつもりもなく、素晴らしい側面も多々あるわけですし、日本人は勤勉で優秀な人種だと思っています。僕なんかもやっぱり学んできたことを日本の企業で変えられるのであれば、伊藤さんのヴィジョンに共感をして300X Communityでお役に立ちたいですし、できることは沢山あると思います。参加者には、俺1人でドライブしてやる位の意気込みがほしいですよね。色々な助け舟があったとしても、それを実践するのは本人な訳ですから。
―300X Academy構想について 300X Communityに期待するのは「最終的に日本が将来変わること」
伊藤:僕はタイの日本人学校で日本の義務教育を終えて、高校はインターナショナルスクールに行きました。大学はアメリカへ行き、タイで働いて日本で働いた後にアメリカのビジネススクールでM B A取得をしたということで海外で高等教育を受けてきました。日本と海外の教育を比較した時に良い点と悪い点それぞれがあると思います。
日本と海外の教育を比べ、どちらがビジネスで即戦力、もしくは永続的に戦力になるかと言うと、やっぱり日本の教育ではないと思うのですよね。だから、ゆくゆくは世界でも通用するグローバルビジネスタレント養成所のような、ビジネススクール、それを称して300X Academy、みたいなものをやりたいと考えています。
白川:良いですね。
伊藤:300Xコミュニティに集まる人達は、色々な企業で事業責任者や経営トップをやってきたり、厳しいと言われる外資系企業で結果を出してきた人達が多いです。そのような人たちが持っている知見は凄いものだと思うのです。それらをシェアできる場があれば、地震のスキルを身に付ける上で1社で働いて学ぶよりかはそう言った人たち、先輩たちの話を見聞きすることで100倍情報が入ってくると思うし、グローバルビジネスタレント養成所である300X Academyを通じて切磋琢磨し続けることができますからね。
白川:日本で人材育成のセミナーを沢山受けてきましたが、残念ながら記憶に残っているものは少ないんです。それとは逆に、外資系企業勤務時代にグローバルトレーニングで良かったと感じたものは、いくつかありますし、実際に実践してきました。部下と話す時、人前で話す時や交渉の持って行き方など、日本のセミナーで学べなかったことが多くありました。何より、結果に対するコミットメントやその追求の仕方が違いますね
―日本の教育って大丈夫?
私は小学生の時にオランダに住んでいて、中学生の時に日本に帰国して1番衝撃的だったのが、英語を話せたので先生に「起立と言え」と言われたのですよね。オランダには起立という概念がないのですが、「Stand Up」と言ったら、先生に「バカヤロー!pleaseを付けろ!Please Stand Upだ!」と言われて、「はーっ?」となりましたよね(笑)。
伊藤:先生に?
白川:はい。
伊藤:最低ですよね(笑)。
白川:それで授業で、「A、B、C、・・・」と言い続けるわけです(笑)。その時のカルチャーショックはけっこう衝撃でしたよ。
伊藤:それ、学校に行きたくなくなりますよね(笑)。
白川:先生からすれば、クソガキが英語を学んでいようと関係なくて、絶対的な服従関係がありましたからね。
伊藤:それは傷付きますよね。聞いていて不愉快になります。
白川:でも日本の教育なんて、そんなものではないですか。型にはまった、コピー人間を沢山造る事で、その中で、優等生、普通、劣等生という現象を生んでしまってますよね。そうではなく、若者の可能性を引き出す教育がやはり遅れている様に感じます。デジタル化が進めば進むほど若者の方が知識が豊富になりますから、私は教育者ではないのであまりいい加減なことは言えませんが、教育の現場の抜本的な改革というのは重要だと思います。
伊藤:その先生に、「お前は何様だ?」って聞きたいですね。僕はアメリカの大学やMBAでいつも良いなと思っていたシステムが、生徒が学期末に授業を教える教授たちの評価をする訳ですよ。その評価が低ければ、その先生の仕事がなくなる可能性もあるのですよね。ですから、先生達も必死になって新しいものを身につけ、それら新しい知識や知見を自分の授業にフィードインして授業を行います。
僕はそれをある意味当たり前だと思っていたので、日本にはそういうものがないと聞いた時にびっくりしましたし、教授たちは自分の教える方法について、いつ誰から、何を元にフィードバックを受け、改善していくのだろうかと疑問に思います。日本の教え方はグローバルスタンダードで考えると、もの凄く遅れているのでは無いかと疑問に思ってしまう訳です。
白川:笑っちゃいますよね。それが30年以上前の話ですが、
伊藤:全然変わってないですからね。
白川:息子見て分かりますからね、そんなに変わっていないと。
伊藤:僕の元部下から聞いた話なのですが、息子さんの名前、漢字が難しいのですが、学校の授業で彼が黒板に名前を書いた時に、先生に「そんな漢字は教えていない!習った漢字以外使うな!」と怒られたというのですよね。でもそれって、日本ぽいと言えば日本っぽいし。教えていないのだから、勝手なことをするなと。
先日も僕と打ち合わせをしていた金融機関に勤めている人が、打ち合わせ後に上司に報告をしたら、「バカヤロー!俺が許可していない打ち合わせをするな!」と言われて、心が折れている訳ですよ。
白川:ほー。
―300X Communityを通じて実現したいこと
伊藤:かわいそうですよ。凄く優秀な人がそういう目に遭っていて。教育が昔から変わっていない訳ですからね。そうやって個性を殺されているのです。会社に入社する前に「個性的な人間がほしい」と言われていたのに、いざ入社をして頑張っても勝手なことするな、と個性を殺されてしまう。この文化は変えなければダメですよね。
白川:ある意味、高度経済成長時代に、「これでよし」とされたコピー人間を大量生産していたのですよね。そこから次のステージに進めていないのが今の日本です。我々が学校教育に携わることはできないですが、社会人になってから学べることは一杯あるし、300X Communityは意義ある形になるし、我々が体験してきた事や、感じてきた事を後世につないでいきたいですね。アカデミー化していくことは非常に面白いですよね。
伊藤:これまでのキャリアで外資と日本のトップ企業で働いてきて、色々な幹部研修や人材育成のトレーニングに参加させてもらってきました。ソニー時代には、ソニーグループ16万人の中から24人に選ばれ、UCLAのビジネススクールで学ばせてもらったこともあります。世界中からそこに集まった人は皆、若くしていろんな事業部のヘッドをやっていました。1年間自身が事業責任者を務める仕事をしながら勉強、プロジェクトを同時にやるという体力的にもかなりきつい経験をしました。ありがたいことに、僕はそのような幹部研修やトレーニングプログラムをいろんな会社で経験させてもらったのですよね。
だから色々な会社で改革をすすめる時に「他社や他業界ではこうだよ」と言うことができました。それは同じ会社にずっといると学べないことでもありますからね。
例えば、僕1人が10の業界で10パターンのものを学んできたとするじゃないですか。そのような人が300X Communityに300人も集まれば、300×10パターンものアプローチ、勉強の方法、育成法、他社事例が手に入る訳ですよ。これって自信を磨く上でも最強のTANK(水槽)だと思っています。
僕の会社はX-TANKと言います。Xには異端児、変革者、チェンジエージェント、エキストラのX、すなわちもう一歩頑張ろう、それからエクスポネンシャル・グロース(急成長)のXという意味があります。そういう人達が1つの場、TANKに集まったら何かすごい科学反応が起きるのではないかなと。それが300X Community なのです。
このタンク、ここでいう300X Communityにいて切磋琢磨することで、転職をしなくても他業界や他社事例が身につく訳です。また、ここでやるプロジェクトを会社の組織に持ち帰ることで変革ができるかもしれない。僕が経験してきたのは、自動車、スポーツアパレル、清涼飲料、IT、コンテンツやハードなどですが、それぞれの業界から学ぶものが絶対にあるはずなのです。300X Communityを活発な空間にして、最終的に日本が将来世界でも一流国として成長し、変われることを期待しています。
白川:良いですね、高い志を持つことは。300X Communityに入る方には色々な悩みもあると思うので聞きたいですし、積極的に参加してもらうことによって、様々な情報交換から始まって次のステージに進むのが理想かなと思いますね。
―やる気がある人達に集まってほしい
伊藤:時間は有限ですからね。クライアント先の企業や講演会などで必ず言うメッセージが、「世の中って、『できる・できない』ではなくて、『やるか・やらないか』しかない。『やる』を選択するのか、『やらない』を選択するかしかない」というのがあります。「できる・できない」というのは過程の話であって。今「やる」かどうかの話でしかない訳ですからね。
やっぱり変わろうとしないことの方がリスクだと思うし、だからこそ300X Communityには「やる」を選択する人達に集まってほしいですね。
白川:僕もよく言ってきたのが、「やる気があるのかないのか。できるのかできないのか」となります。「できないのは問題ない」し、知識が足りなければ教えてあげていましたね。ただ、やる気がないのは論外なので、出て行ってもらえれば良い訳です。
その基本的なマインドセットのディスプレイって大事ですよね。
伊藤:マインドセットが100%前向きの人と業界経験や知識だけが100%の人と比較した場合、僕は知識経験を優先する人よりも姿勢を優先する人をとりますね。昨日の常識が今日の非常識になるほどに世の中が変わっている訳ですよ。その中で、今ある環境で「やる」を選択している人達を「それはダメだよ」「前例がない」と頭ごなしに言う人間に対して、「君はやったのか?」と聞くし、仮に以前やったけど出来なかったからと言って今日明日やってまた出来ない、と決め付けるのは間違いだと思うのです。そのような人は愚かですよね。
白川:やる気がないのが分かればダメ出しをしますし、能力がない人でも、一生懸命やっていて少しずつ成長しているのが見えてくると面白いですからね。10やってみて8も失敗だけど、2はめちゃめちゃ面白いことをやったりとか。そのような環境を「もっと作らなければならない」と思いますね。
伊藤:同感です。環境を作り、与えることがリーダーの仕事だと思うし、だからこそ僕は部下には転んだり失敗することを推奨します。転ばなければ分からないこともありますからね。日本は減点主義だから、「転ぶのが怖いから何もしない」というのがものすごく顕著に出る。特に金融機関はその文化が顕著です。これが日本起業文化の1番の問題点なのではないかと思います。だから僕は部下には最初はわざと転ばせたり失敗させることを、意図的にやるのです。その時にはあえて怒らない。経験を積んで「失敗しても良いのだ。怒られないのだ」というのが見えてくると社員は少しずつ変わってきます。とは言え、同じ所で何度も同じミスをすれば、そりゃ怒りますよ(笑)。
―300X Communityは世界中にいる日本人が集まれる場所
白川:はははは(笑)。今回のコロナの影響によって、日本の経営が酷すぎることが分かったじゃないですか。やっぱり、リーダーの資質って凄く大事ですよね。もちろんリーダーにも失敗はあると思うのですが、今何を動かさなければならないのだというその瞬間の判断や人を動かすパワーは凄いの一言で片付きますが。そこに至るまでの情報量や、色々な人達からコンセンサスを取っているのでしょうけどね。
やっぱり、ここで英断するぞという時に日本のリーダーを見ていると、なかなかいないというか。組織としてそういったレスポンシビリティーがその人に付与されていないという構造上の問題もあると思うのですけど。局長になった、本部長になったというのは何らかの実績があってなのでしょうが、「本質的にその人に切盛りさせるだけの資質があるのか」という所ももう少し見てほしいと思いますね。
伊藤:年功序列で上がってくるとなると、その組織の中でしかいろんなことを見ないので、外でどう戦っていけるか、ということじゃないのですよね。
僕は年齢で区切るというやり方が本当にやばいと思っています。今、台湾で話題になっているオードリー・タンさんというIT大臣は、36歳で大臣に任命されています。台湾は日本と同じ東アジア文化圏なのに、めちゃくちゃ頭の柔らかい人達が多く、今回のコロナ対策でも最も成功している国です。日本はそのような国を見て、なぜ学ばないのだろうと思います。
白川:「日本って、何かおかしい」というのを今回のコロナで日本全国民が気付きましたよね。ここでの気付きを、次にどう繋げるかとポジティブにやらないと次がない訳で。
伊藤:Go To トラベルキャンペーンもそうだし、マスクする・しない議論もそうだし、自粛や給付金の話もそうだけど、結局誰かがやるのを待つか、批判するかしかしないじゃないですか。批評批判だけでは何も生まれないのをわかっているはずなのに。限られた時間の中で自分がコントロールできる部分からでも少しずつ変えていく方が絶対に良いと思うのですよね。
マスクが届かない時に、色々と文句を言っている人と、自分でマスクを作ってみましたという人。この差だと思いました。2人のどちらと付き合いたいかと聞かれたら、僕は躊躇なく後者と付き合いたいですよ。批評批判ばかりして何も生み出さない人ではなく、新しい未来を作り出すべく行動をする人。そういう人にこそこのコミュニティに集まってもらいたいし、そう言った人たちと一緒にいることそれだけでも大きな力になると信じています。
300X Communityは、我々が考えるポジティブな「これから」を創り出す場所です。とは言ってもここで何をするのか、何をしたらいいのか、まだわからないことだらけだと思います。正解はわかりませんが、批評批判ではなく、信じることにむけて行動を起こす、という共通の価値観を持てる人達と一緒にできたらなと思うのです。ここで思いっきり暴れてもらいたいし、いろんなプロジェクトに僕も混ぜてもらいたいという感覚があります。
白川:確かに思想やヴィジョンはもちろん大事なのですが、あまり重苦しく考えず、「何かを変えたい」「変わりたい」「少し新しい学びがほしい」みたいな人達が、
伊藤:良いですね。そいう人達の方が柔軟だし、僕らが知らない業界の人達が沢山来てくれたら。
僕がやりたいことの1つに、日本のペットの殺処分をゼロにしたい、というのがあります。例えばどこかに山を借りて、捨て猫や捨て犬をそこで保護してあげたり、定年を迎えた人たちにそこで働いてもらったり、介護の場でペットセラピーをしたり、そのペットを飼ってもらったりできたらなと思っています。日本は残念ながら先進国の中で最もペット殺処分の高い国ですからね。300X Communityは、そういうのを変える場にもなるじゃないですか。これはあくまでも一つの例です。ここでは別に営利活動だけをしようと考えていないということです。
白川:全てが営利活動である必要はなくて、新しいことを考えて実行するのは大変ですが、何か実現できる場にできたら有意義だと思いますね。
伊藤:皆色々な人生経験をしている。もしくは、経験がなくてもパッションは沢山ある。誰が主役という訳ではなくて、プロジェクト毎に与えられるポジションがかわる、というのもありだと思うのですよね。それが1つの会社にいるとなかなかできないですからね。
今回ヴァーチャルでやって同じような空間で日本中や世界中にいる人が集まれる場所があって、時々リアルで会うことができたら素敵な空間になると思いますね。
白川さん、一緒に300X Communityを盛り上げていきましょう。
白川:伊藤さん、宜しくお願いします。